マップ デザイン
地形図ベースの詳しく分かりやすい登山地図・ハイキングマップ
私たちが制作する登山地図・ハイキングマップは、国土の全域について統一した規格で整備された国土地理院地形図をベースとしています。日本の基本図である地形図は、全国どの山もカバーしています。地形図の読み方を習得すると、どの山も詳しく知ることができます。身近な里山も、憧れの名峰も、地形図の読み方は一緒です。いわば地形図は誰もが共有できる知的財産、知的資源です。
私たちの地図制作の基本は、この地形図というリソースを生かすこと。そのうえで、山岳地形を立体的につかめる段彩や陰影、分岐の拡大図など、主題図である登山地図・ハイキングマップとしての詳しさ、分かりやすさをデザインしています。
登山地図・ハイキングマップ制作の第一段階では、地形図を構成する要素が数値化された国土基本情報をもとにベースマップを生成。ベースマップ上の等高線や記号の配色、標高値や居住地名などの書体を設定していきます。
ベースマップでの設定は、十数項目におよびます。等高線は茶系色、植生記号は濃灰色など、登山者・ハイカーが使い慣れてきた地形図のイメージを損なわず、次の段階で追加するコース情報を読み取りやすい配色や書体をデザインしていきます。
実踏調査をベースマップに反映
ベースマップは、国土地理院地形図を再現したものといえます。多くの場合、このベースマップ自体を修正することはありません。
ただし、上記の城峯山の実踏調査では、頂上南側、石間峠から城峯神社にかけての道路について、地形図の表記と現況に差違があることを確認。1車線道の延伸部分をGPSで測位し、地形図では破線の徒歩道となっている区間をベースマップでは1車線道に修正しています。
また、城峯山付近は、徒歩道(破線)や軽車道(実線)に並行するように3つの市町の境界(二点鎖線)が表され、道がやや判読しにくくなっています。山岳地では、こうしたケースがよく見られることから、境界を薄灰色の線に設定しています。
ほかに城峯山の山名は、ハイキングコースとなる道路に重ならないよう横組み(横書き)を縦組み(縦書き)に変更、標高数値の配置もコースと重ならないよう調整しています。真位置(実際の位置)である三角点記号については地形図の位置を維持します。
実際に歩いて確認した情報をベースマップに描画
季節の景観が美しいユガテは「奥武蔵の桃源郷」とも称される山上集落。かつて山麓からユガテに通じていた古道飛脚道が地元の有志により再興、深沢山・愛宕山周辺では「奥武蔵ロングトレイル105K」の整備が進められ、ともに新しいハイキングコースとして期待されています。
いずれの新コースも実地踏査を行い、経路や主要地点の位置をGPSで測位。新コースの経路と地名をベースマップに記載していきます。このとき、コース中の地名については、登山者・ハイカーが実際に歩くとき、目印にもできるよう、原則として、標識や案内図など現地で確認できたものを記載しています。「地図に載っているけれど、現地では確認する物がない」、「現地に標識などがあるのに、地図には載っていない」といった混乱を避けるためです。
ハイキングコースは、赤色の破線で描画していきます。地図の目的によっては、メインコースを明瞭な赤色、サブコースを橙色などで区分します。地形図では、濃灰色の破線が徒歩道を表し、ハイキングコースの多くも徒歩道を利用することから、ハイキングマップでも線種を破線に設定しています。
破線に設定することで、ハイキングコースが軽車道(濃灰色の実線)や車道(数種の幅がある二条線)の場合でも、歩く道路(地図でコース線と重なっている道路)の種類を判読できるようにしています。コース選びやコースの下調べをする際、「この区間は徒歩道を歩くのか、車道を歩くのか」、登山者・ハイカーにとって重要な情報となるからです。
試行を重ね、見やすい段彩を設定
標高によって色を塗り分け、土地の高低を表す段彩と、一定方向からの光を想定して尾根や谷に陰影を施す地形表現は、登山地図・ハイキングマップ制作において最も重要となるデザインのひとつです。
配色と色を塗り分ける標高ラインは、無限ともいえる組み合わせのなかから試行を重ね、記号類や注記の可読性を落とさない配色を割り出し、見やすい段彩を施しています。
段彩は、同じエリア内の地図では、色を塗り分ける標高ラインを統一しますが、地図ごとに標高ラインを変えて設定することもできます。これにより標高の低い丘陵地や低山でも、色彩の幅がある見やすい登山地図・ハイキングマップの制作を可能としています。
縮尺1:25,000を基本に制作
地図の縮尺(スケール)は、国土地理院地形図と同じ1:25,000を基本に制作します。判型やコース距離によっては、より詳しい表現ができる1:20,000、1:17,500に設定します。
地図制作の工程において、縮尺は地図ごと任意で設定することもできます。ただし、縮尺をできるだけ統一することで、地図を利用する登山者・ハイカーから見るとコースの距離感や所要時間をイメージしやすい、というメリットがあります。
ロングコースでは縮尺1:40,000を採用
距離の長いコースをひとつの地図に収める場合などは、1:40,000、1:30,000といった縮尺を設定します。ただし、縮尺1:25,000地形図をベースに用いると、地図要素が凝縮して重なり合ってしまうため、植生記号を省略し、等高線を20m間隔(1:25,000地形図では10m間隔)に間引くなどの処理をして地図を簡略化します。
複数のコースを一覧し、コースの索引とする場合などは、1:100,000〜1:150,000といった縮尺を設定します。ベースには国土地理院の地勢図(1:200,000)相当の国土基本情報を使用します。地図要素はさらに簡略化されますが、1:25,000と同様の段彩・陰影によって地形を表現しています。
余裕を持って歩くための情報
私たちが制作する登山地図・ハイキングマップで、大きな特長となる要素が拡大図と注記です。拡大図は、登山口や分岐などを分かりやすく表示した概念図です。現地で迷わず歩くための情報といえますが、事前にコースの概要を把握しておくことで、余裕を持って歩けるという効果を重視しています。
注記は、コースの特徴や見どころ、休憩適地などのアドバイス、および急坂や険しい地形、進路を誤りやすい箇所など、注意喚起を簡潔に伝える情報です。事前に地図上で歩く経路をなぞり、注記を読み進むことで、安全な登山・ハイキングを実現する心構えにも結びつくよう考えています。
サンプルマップを見る
JavaScript ライブラリ「Leaflet」で国土地理院地図を表示し、サンプルマップ(扇山・百蔵山ハイキングマップ ※|山梨県大月市・上野原町)を重ねた地図です。地図の拡大縮小やスクロールができます。
登山地図・ハイキングマップ受託制作のご案内
実踏調査から印刷用データ・アプリ用データ(カスタムマップ)作成まで、地方公共団体や観光協会、観光関連事業者向けに、熟達したスキルで出版物と同じクオリティの登山地図・ハイキングマップを受託制作します。
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※ 増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥多摩・高尾500km(佐々木亨著|山と溪谷社)の読者向けに試験提供しているマップ(GPS地図アプリ対応カスタムマップ)です。本書のコースガイド記事に連動しています。本書と併せてご活用ください。*ファイルの再配布はご遠慮ください。測量法に基づく国土地理院長承認(使用)R 3JHs 858