メイキング|登山・ハイキングガイドブック制作

増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥武蔵・秩父500km

『増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥武蔵・秩父500km』(佐々木亨著|山と溪谷社|2022年4月)が刊行となりました。収録コースは、30から45コースに。コース延長は354kmから500km超に。さらに巻末には外秩父七峰縦走コース、関東ふれあいの道・埼玉県コース、奥武蔵ロングトレイル105Kの地図を収録。大幅にアップデートしました。

 増補改訂版では、歩くほどに、通うほどに、奥武蔵・秩父が「郷土」となるようなコースを選び、全体的に写真・文章・地図を見直して再構成しています。ウォーキング、ハイキング、トレイルランニングなど、思い思いのスタイルで奥武蔵・秩父を再発見する、そのお役に立てたら幸いです。

増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥武蔵・秩父500km 収録コースはこちら

増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥武蔵・秩父500km メイキング 制作舞台裏
コースの実地踏査で用いる測量野帳。長年同じ製品を使っている

 奥武蔵・秩父エリアの実地踏査で使ったノート(測量野帳)は29冊、延べ約1500ページ。測量野帳はハンディサイズで携行しやすく、立ったままでも書けることが特長です。紙面が表計算タイプの「レベル」、方眼の「スケッチ」などの種類があり、登山・ハイキングコースの実踏調査では、文字も図画も自在に書ける「スケッチ」を使っています。

 測量野帳のページを開いたら、横にして使い、紙面の下から上へと書き進んでいきます。現地では青色の油性ボールペンだけで筆記、帰宅してから彩色します。

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ベースマップ作業のチェックリスト、いわば「地図の地図」

 これは「地図の地図」。コースマップを制作する最初の工程では、数値化された国土基本情報をもとに、地形図の図郭6〜8面分の大きなベースマップを生成。グラフィックソフトで400〜800%拡大して、記号や注記の位置を調整していきます。

 その際、広大なベースマップのどこを作業しているのか「現在地」を見失わないために、紙に「地図の地図」を書き出して、チェックしながら作業を進めていきます。この作業だけで、1カ月以上、気の遠くなるような仕事ですが、まったく手を抜けない大事な工程です。

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コース断面図でコースタイムを検討・算出

 写真はコース断面図の原稿です。GPSで測位したトラック(歩いた軌跡のデータ)を用い、縦軸を標高、横軸を水平距離とした断面図を生成。同時に設定した区間ごとの推定所要時間をもとにコースタイムを検討・算出します。

 コースタイムは、調査時の実際の所要時間と、経験値から設定したパラメータによる計算結果とを照合。最終的には、勘と案配も加味して割り出します。ちなみにコースタイムは、距離や標高差、および足場の状態といった負荷が同じ区間でも、それまでの行程が長い場合などは疲労度を考慮して長めに設定します。また、たとえば鉄道の駅がコースの起点または終点で、乗降するホームから改札口まで数分かかるような場合、コースタイムにもその時間を5分単位で加算します。駅での乗降であわてず、余裕を持って行動できるようにするためです。このような登山者・ハイカー目線のノウハウも長年の取材経験から導き出しています。

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コースマップ原稿に注記を書き入れる

 GISとグラフィックソフトを用い、コースマップ制作に要する期間は、だいたい3〜4カ月。そのうち核心となるのが、アドバイスや注意喚起を書き込んでいく工程です。

 書き込み過ぎると、うるさくなるし、少ないと曖昧な地図に。取材ノートに克明に記録した情報をどう取捨選択して、コースマップに反映させるか。試行錯誤の尽きない作業です。

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コースガイド記事の写真選定

 制作工程で、楽しくもあり、悩ましくもあるのが、掲載する写真を決める作業。写真は、すべて取材時に自ら撮影したものです。天候や時期によっては、2度3度と現地に足を運ぶこともあります。

 本書では1コースあたりに掲載する写真は4点。現地を歩いて撮影した膨大な写真をまず8〜12点に絞り込み、このようにコンタクトシートをプリント。本文の執筆と並行して、最終的にここから4点を選びます。

 ただ、すんなり選べるときもあれば、なかなか決められないことも。「迷わず歩く」ガイドブックを作るのに、写真選びには、いつも迷います。

登山地図 ハイキングマップ 実踏調査 実地踏査 取材ノート 測量野帳
登山道・ハイキングコースの実踏調査で長年使い続けている取材ノート(測量野帳)

増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く 奥武蔵・秩父500km(佐々木 亨著|山と溪谷社) Amazonで購入

山と溪谷2023年9月号付録 八ヶ岳登山地図帳

『山と溪谷』(2023年9月号|八ヶ岳特集|山と溪谷社)の綴じ込み付録、「八ヶ岳登山地図帳」を制作しました。登山ガイドブックの定番『アルペンガイド八ヶ岳』(佐々木亨著|山と溪谷社)に収録したA5判28ページの地図帳を再編集したもので、八ヶ岳のほぼ全域をカバー。アルペンガイド八ヶ岳の刊行にあたって、数年がかりで綿密な実踏調査を繰り返し行い、登山者目線でつくった詳細な地図です。

山と溪谷2023年9月号付録 八ヶ岳登山地図帳 メイキング 制作舞台裏
A5版28ページ 八ヶ岳のほぼ全域を網羅する詳細な登山地図帳

 地図の規格は、国土地理院地形図に準拠。山岳地形を直感的につかめる段彩や陰影を施し、八ヶ岳全域の登山コースを縮尺2万5000分ノ1で紹介。加えて八ヶ岳の主要部となる権現岳・赤岳、横岳・硫黄岳、天狗岳、北横岳周辺については、縮尺1万5000分ノ1詳細図を収録しています。

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実踏調査にもとづく見やすく使いやすい登山地図

 登山コースを実踏調査し、コースの景観や特徴、注意箇所などを克明に取材・記録。さらに豊富な山岳取材経験をもとにコースタイム(標準所要時間)やコースグレード(難易度)を検証。これら実地取材の成果が反映された登山地図です。

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取材ノート(測量野帳)とハンディGPS機器

 写真は登山コースの実踏調査で使っている筆記具とハンディGPS機器(南八ヶ岳・横岳奥ノ院付近)。位置情報の取得にはスマートフォンのGPS機能も活用しますが、ハンディGPS機器は、単三電池で連続12時間以上使用できることがメリット。数日間の取材では必携のツールです。

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大小の岩峰が連なる横岳の稜線を取材

 大小の岩峰を縫うように進む横岳日の岳付近のコース状況をメモした取材ノート(測量野帳)。地形や植生をはじめ、設置されているクサリやハシゴ、その位置と長さ、注意点などを克明に書き留めていきます。

 写真のメモは、かつての取材記録の余白に追記しているもの。地形の複雑な場所では、時期や進行方向を変え、繰り返し実踏調査することもあります。現地では油性ボールペンのみ使い、帰宅してから彩色します。

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地形の複雑な岩場は立体的にスケッチ

 岩稜が続く横岳や急峻なキレット付近は、地形を立体的にスケッチして登山コースを記録。もちろん写真でも記録しますが、手書きのスケッチのほうが確実。後日、取材ノートのスケッチを見返すと、記憶が鮮明によみがえり、執筆にも地図制作にも生きてきます。

アルペンガイド八ヶ岳 登山地図帳 山と溪谷社
アルペンガイド八ヶ岳(佐々木 亨著|山と溪谷社) 登山地図帳と取材ノート

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 実踏調査から印刷用データ・アプリ用データ(カスタムマップ)作成まで、地方公共団体や観光協会、観光関連事業者向けに、熟達したスキルで出版物と同じクオリティの登山地図・ハイキングマップを受託制作します。

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